スマホで動画は普通に見られる。SNSも音楽再生も問題ない。でも、サイトを開こうとすると妙に待たされる。
速度を測ってみると、134Mbps。光回線に迫る数字です。遅いはずがありません。
じゃあ、何が遅いのか。
私はmineoを10年使っていて、この違和感がずっと引っかかっていました。2週間で135回の速度計測をしたとき、そのデータの中に答えが埋まっていました。
速度は落ちていませんでした。落ちていたのは、別の数字でした。
これはmineoに限った話ではなく、スマホの回線全般で起きていることです。ドコモでもauでもソフトバンクでも、格安SIMでも同じように起こります。そして実は、自宅の光回線でも起こります。
まず、速度とPingは別のものです
少しむずかしい話になりそうですが、ここだけ押さえてもらえればOKです。

下り速度 最速値196.3Mbps、を記録 Speedtest by Ookla
速度計測アプリを開くと、大きく「Mbps」という数字が出ます。それとは別に、小さく「Ping」や「ms」という数字も出ているはずです。
この2つは、まったく違うものを測っています。
| 項目 | 何を表すか | たとえると |
|---|---|---|
| 速度 (Mbps) |
一度にどれだけ運べるか | 道路の幅 |
| Ping (ms) |
呼びかけて返事が返るまでの時間 | 往復にかかる時間 |
Pingは「こちらからサーバーに声をかけて、返事が返ってくるまでの往復時間」です。
単位のms(ミリ秒)は1000分の1秒なので、「98ms」なら0.098秒。まばたきより短い時間です。
道路にたとえるなら、速度は「道幅」、Pingは「往復の所要時間」。道幅が広くても、往復に時間がかかれば、何度も行き来する用事は遅くなります。
サイトの表示速度は、Pingで決まります
ここが肝心なところです。
Webページを1枚開くとき、実は裏側で数十回のやりとりが発生しています。
「このアドレスはどこ?」
→ 返事 「つないでいい?」
→ 返事 「このページの中身ちょうだい」
→ 返事 「そこに書いてある画像もちょうだい」
→ 返事 「この文字の飾り付けの情報も」
→ 返事……
こんなやりとりが、画像やデザインの数だけ繰り返されます。1ページで30〜50往復することも珍しくありません。
ここで、1往復あたり40ms(=0.04秒)余分にかかるとどうなるか。
0.04秒 × 30往復 = 1.2秒
1回あたりはまばたき以下でも、積み重なると1秒以上の差になります。これが「ページがなかなか出てこない」という感覚の正体です。
なぜ「40ms余分に」なのかというと、実際にそういう差が出ているからです。同じ場所・同じ条件で測ったところ、午前のPingは58ms、昼は98msでした。40msの差です。
一方、動画は違います。 動画は最初にデータをまとめて読み込んで貯めておくので、往復の回数がそもそも少ない。だからPingが悪くなっても、ほとんど影響を受けません。荷物を一度に大量に運ぶ用事なので、道幅さえあれば足ります。
つまり——
昼でも動画は普通に見られる。
でもサイト表示だけ待たされる。
この現象は、Pingが悪化したときに起きます。
実測|速度は戻るのに、Pingは戻らない
ここからは実際に測ったデータです。
東京都心の同じ場所で、同じ計測サーバーを使い、時間帯だけを変えて43回測りました。
| 時間帯 | 下り速度 | アイドル時Ping |
|---|---|---|
| 午前 (9〜11時台) |
147.0 Mbps | 58 ms |
| 昼 (12:00〜13:05) |
87.4 Mbps | 98 ms |
| 夕方 (17:40〜18:35) |
133.9 Mbps | 97 ms |
昼に速度が落ちるのは、まあ想像通りです。混雑する時間帯ですから。
問題は夕方です。
速度は133.9Mbpsまで戻っています。午前とほぼ同じ。数字だけ見れば「夕方は快適」という結論になります。
でもPingは97ms。昼と変わっていません。
つまり夕方は、速度計測では何の問題も見えないのに、サイト表示だけが遅い時間帯ということになります。私が感じていた違和感は、まさにこれでした。

定点計測で下り最速値 196.3Mbpsを記録 Speedtest by Ookla
これは実際の定点計測で下りの最速値を記録した際の画面です。下り196Mbps——光回線並みの数字が出ています。
しかしPingのアイドルは98ms。午前中央値の58msより悪いです。そして通信中の応答であるPingのダウンロード値は1,108msまで伸びていました。
そして、通信を始めた瞬間にもっと重くなる
さらに調べていくと、もっと大きな問題が見つかりました。
上の58msや97msというのは、何もしていない待機中の数値です。実際にダウンロードが走っている最中の応答速度を測ると、こうなります。
| 回線の状態 | 応答速度 |
|---|---|
| 待機中 | 92 ms |
| ダウンロード中 | 749 ms |
| アップロード中 | 445 ms |
約8倍。
しかもこれは平均的な値です。43回測ったうち、35回(81%)で「通信中に1秒を超える遅延」の瞬間が発生していました。
自分でページを開こうとした瞬間に、自分の回線が重くなる。何かを読み込み始めた途端に、次の操作が遅くなるという、なんとも間の悪い現象です。
なぜこうなるのか|レジの行列で考える
仕組み自体は、実はそれほど難しくありません。
スーパーのレジを想像してください。

レジが空いているときは待ち時間92ms、ダウンロード中は行列の最後尾に並ぶため749msまで悪化する
レジの処理速度が変わらないなら、行列が長いほど自分の番は遅くなります。 これは当たり前の話ですよね。
通信も同じで、機器の中にはデータが並ぶ行列があります。しかも困ったことに、この行列は「いくらでも並べる」設計になっていることが多いのです。
空いている時は誰も並ばないので快適です。ところが動画の読み込みなど、大量のデータが流れ始めると、一瞬で長蛇の列ができます。
そこにあなたのタップが割り込む。最後尾に並ぶことになるので、順番が来るまで待たされる。
これが「通信中だけ応答が悪くなる」正体です。
この現象にはBufferbloat(バッファブロート)という名前が付いています。日本語だと「バッファ膨張」などと訳されますが、要するに「行列を作れるスペースが広すぎる問題」です。
mineo特有の問題ではありません。 モバイル回線全般、場合によっては自宅の光回線でも起きます。
3Mbpsに絞ったら、逆に軽くなった
ここで面白い実験結果があります。
mineoには「パケット放題3Mbps」というオプションがあります。最大3Mbpsに速度を制限する代わりに、データ容量を消費せずに使い放題になる仕組みです。
これで18回測ってみたところ、こうなりました。
| 項目 | 通常モード | 3Mbpsモード |
|---|---|---|
| 下り速度 | 約100 Mbps | 2.89 Mbps |
| 待機中の応答 | 92 ms | 73 ms |
| 通信中の応答 | 749 ms | 152.5 ms |
| 悪化の倍率 | 約8倍 | 約2倍 |

下り速度は通常モードの約100Mbpsから3Mbpsモード2.91Mbpsへ35分の1に落ちるが、通信中の応答は749msから160.5msへ5倍軽くなる
速度は35分の1なのに、通信中の応答は5倍近く軽い。
レジで考えると分かります。
通常モードは、大量の買い物客が一気にレジへ押し寄せる状態です。行列が伸びて、あなたのタップは最後尾に並びます。
3Mbpsモードは、そもそも店に入れる人数を制限しているようなもの。買い物のスピード自体は遅くなりますが、行列ができないので、あなたの番はすぐ来ます。
つまり「速い=快適」とは限らないということです。
とはいえ「3Mbpsの方が快適です」と断言はできません。大きなファイルのダウンロードや高画質動画では、3Mbpsは明確に不利です。用途によって答えが変わります。
関連記事パケット放題3Mbpsは本当に3Mbps出る?増速後を実測
どんな時に困るのか
この遅延が実際に効いてくる場面を挙げます。
オンライン会議
一番わかりやすく困ります。
会議の音声は「今すぐ届いてほしい」データです。ところが、同じ回線を使っている別の通信が大きなデータを流していると、音声も同じ行列の最後尾に並びます。 優先レーンはありません。
たとえばこんな状況です。
- 自宅で会議中に、家族が動画をダウンロードしている
- テザリング中に、つないだPCが勝手に自動更新を始めた
- 自分のスマホでも、会議中にクラウドバックアップが裏で走っている
行列は回線ごとにできます。同じ回線につながっている限り、誰の通信でも巻き込まれます。逆に、会議相手が何をダウンロードしていても、こちらには影響しません(それは相手の回線の行列なので)。
結果として、会話がかみ合わなくなったり、音声がブツ切れになったりします。
オンラインゲーム
待機中は快適なのに、通信が走った瞬間にラグが出ます。速度は十分なのにラグいという状態は、これが原因のことがあります。
テザリング
スマホを親機にしてPCをつないでいるとき、PCの大きなダウンロードが、スマホ側の通信まで巻き込みます。 行列を共有しているためです。
Webページの表示
そして冒頭の話に戻ります。ページを開いた瞬間、自分で行列を作って、自分が並ぶ。だから「重い」と感じます。
自分の回線を確かめる方法

スマホとPCの両方計測できる Speedtest by Ookla
気になった方は、Speedtestアプリで確認できます。
Speedtest by Ookla
「Responsiveness」という項目を見てください。日本語版だと「応答性」などと表示されます。ここに3つの数値が並んでいます。
| 表示 | 意味 |
|---|---|
| アイドル (Idle) |
何もしていない時の応答速度 |
| ダウンロード (Download) |
下り通信中の応答速度 |
| アップロード (Upload) |
上り通信中の応答速度 |
アイドルと、ダウンロード中の数値を比べてください。
- 2〜3倍程度 → 良好です
- 5倍以上 → この記事の現象が起きています
- 10倍以上 → かなり重い状態です
私の実測では、待機中92ms → ダウンロード中749msで約8倍でした。
対策はあるのか
正直に言うと、ユーザー側でできることには限りがあります。 行列を作っているのは回線側の機器なので、根本的にはそちらの問題です。
そのうえで、できることを挙げます。
大きなダウンロード中は、大事な通信をしない
これが一番手軽です。 会議中にファイルをダウンロードしない、動画を落としながらゲームをしない。行列を作らなければ待たされません。
速度をあえて絞ってみる
レジのたとえで言えば、店に入れる人数を制限する方法です。
自宅のルーターに「SQM」「QoS」という機能があれば、これができます。あえて速度を少し落とすことで、行列ができないように制御する仕組みです。ただし対応している機種は限られますし、モバイル回線には使えません。
mineoの場合は、mineoスイッチをONにするだけです。 実測では速度が3Mbpsに落ちる代わりに、通信中の応答が749ms → 152.5msと5倍近く軽くなりました。
しかもこの間はデータ容量を消費しません。
| マイピタのコース | 使えるオプション | 料金 |
|---|---|---|
| 3GB・7GB | パケット放題 1Mbps | 無料 |
| 3GB・7GB | パケット放題 3Mbps | 385円/月 |
| 15GB以上 | パケット放題 3Mbps | 無料 |
どのコースでも、何らかの使い放題オプションが無料で使えます。 15GB以上なら3Mbps、3GB・7GBなら1Mbpsが標準で付いてくる形です。
ページを見る、SNSを流し読みする、といった用途なら、あえてこちらに切り替えたほうが快適に感じることもあると思います。逆に大きなファイルを扱うときは不利なので、使い分けですね。
なお、1Mbpsの方は今回検証していません。 3Mbpsで応答が軽くなったからといって、1Mbpsでも同じとは限らないので、そこは断定を避けます。
※ 3日間でmineoスイッチON時の通信量が10GBを超えると、翌日は速度制限がかかります。料金や条件は変更されることがあるので、最新の内容はmineo公式でご確認ください。
バックグラウンド更新を絞る
アプリの自動更新やクラウドの自動バックアップは、気づかないうちに行列を作ります。設定で「Wi-Fi接続時のみ」にしておくと、モバイル回線での影響を減らせます。
混雑時間帯を避ける
これは対策というより回避策ですが、実測では午前中のPingが安定していました。急ぎの作業は時間帯を選ぶのも手です。
なお、ここまでスマホの話として書いてきましたが、この現象はスマホに限りません。
自宅の光回線でも、PCで大きなファイルをダウンロードしながらオンライン会議をすれば、同じことが起きます。「回線は速いはずなのに会議がカクつく」という経験があるなら、原因はこれかもしれません。
今回はスマホで測りましたが、仕組みはどの回線でも同じです。
まとめ
まとめ
- 「速度は出ているのに重い」の正体は、通信中に発生する応答の遅れでした。
- 速度とPingは別のもの。速度は道路の幅、Pingは往復にかかる時間。サイト表示は数十回の往復で成り立つので、Pingの影響を強く受けます。
- 通信を始めた瞬間、応答は8倍重くなりました。43回中35回で、1秒を超える遅延の瞬間が発生しています。
- 原因は「行列を作れるスペースが広すぎる」こと。レジの行列と同じで、後から並んだデータは待たされます。
- 速い=快適とは限りません。3Mbpsに絞ったほうが、応答は5倍軽くなりました。
そして繰り返しになりますが、これはmineo特有の問題ではありません。 スマホでもPCでも、どの回線を使っていても起こりうる現象です。「回線を変えれば解決する」という話ではないので、そこは誤解しないでください。
速度計測の数字だけを見ていると、この部分は一生見えません。もし「速いはずなのに重い」と感じているなら、一度Responsivenessの数値を確認してみてください。
関連記事mineoは昼が遅い?1週間の定点実測でわかった本当の理由
よくある質問
スマホの速度は出ているのに、サイトが重いのはなぜですか?
サイトの表示は、速度ではなくPing(応答速度)に左右されるためです。1ページ開くのに数十回のやりとりが発生するので、1往復あたりの遅れが積み重なって体感差になります。
これはどの回線で起きますか?
スマホの回線全般で起きます。大手キャリアでも格安SIMでも同じです。さらに自宅の光回線でも、PCで大きなダウンロードをしながら通信すれば同じことが起こります。特定の会社の問題ではありません。
自分のスマホが該当するか調べる方法は?
Speedtestアプリの「Responsiveness」で、待機中とダウンロード中の応答速度を比べてください。5倍以上の差があれば、この記事の現象が起きています。
速度を上げれば解決しますか?
しません。今回の実測では、速度の速いサーバーに固定したところ、むしろ悪化しました。速度と応答の悪化には、はっきりした関係が見られませんでした。
どうすれば改善できますか?
手軽なのは、大きなダウンロード中に大事な通信をしないことです。もう一段踏み込むなら、あえて速度を絞る方法があります。mineoならmineoスイッチをONにするだけで、実測では応答が5倍近く軽くなりました。データ容量も消費しません。
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